2015年9月9日水曜日

地球温暖化と少子高齢化

ユニクロにしても和郷園にしても、共通することは価値のある商品を適正価格で消費者に届けるために、自ら流通チャネルの構築に動いたということだ。一見同じような商品をつくったり販売したりしているようで、独自の流通チャネルを持つことで競合相手とはひと昧違った商品を提供できるのだ。日本の流通ネットワークは実によくできている。市場が拡大しているときには、それは効率的なマス・マーケティングを実現するうえで有効であった。しかしデフレ時代にはそうした「便利な」流通チャネルを疑ってみることも必要なのだ。

地球温暖化に関するニュースが増えている。2008年6月9日には、2050年までに現状に対して最大限で80%の温暖化ガス排出削減を目指した福田ビジョンも政府から発表された。もし本当にあと40年で80%も減らせるとしたら大変なことである。炭素燃料の使用が大幅に減るというだけでなく、産業の姿から生活スタイルまで大きく変わっているだろう。40年後の話をしても、国民の多くはずっと先のことのように考えるかもしれない。しかし、世界に目を転じてみると、温暖化ガスの蓄積によって起きる地球規模の気候変動の問題が各地で起きている。欧州を襲った記録的な熱波、頻発する巨大なハリケーンや台風、豪州の干ばつなど、多くの研究者が指摘する地球温暖化の弊害が現実のものとなってきている。こうした温暖化の現実が世界の政治を少しずつ動かし始めている。

これから20年の日本の経済を考えるCWでもっとも大きな構造的な要因は何かと問われれば、この温暖化対策の問題と、少子高齢化のもとでの人口減少と答える人が多いはずだ。少子高齢化も重要な要因だが、ここでは温暖化対策の小売立地への影響について考えてみたい。特に注目したいのは、郊外に広がった商業集積はどのように変化していくのか、という点である。都市の構造や商業集積の姿は時代とともに変化してきている。日本では、1970年代から始まった本格的なモータリゼーションや80年代後半以降の規制緩和の流れで、商業の郊外化か急速に進展していった。最近の規制強化の動きで大型店舗の出店のスピードは少し鈍ってきたものの、依然としてこうした流れは続いている。

ただ、こうした流れが今後20年続くと考える人は少ないだろう。世界が温暖化対策に真剣に取り組み始めれば、都市の姿は中心により多くの機能を集めたコンパクトシティーに変わっていかざるをえないからだ。10年から20年という長い期間をとれば、都市の姿は大きく変わってきている。戦後の経済成長と人口増加の中で、都市は郊外に向かって広がり続けてきた。そうした流れの中で郊外型の大型商業集積が出てきたのだ。大型商業集積は既存の秩序に大きな変化をもたらすうえで重要な役割を果たしてきた。店のレベルだけではわかりにくいかもしれないが、輸入の拡大から中間流通の革新に至るまで、小売の変化抜きに考えることはできないのだ。

地球温暖化と少子高齢化はそうした小売業の姿を大きく変える原動力となるだろう。コンパクトシティーの中にどのように小売業を位置づけるのか、これがこれからの都市開発の大きな課題であることは間違いない。その答えはたぶん旧来型の商店街の復活ではないだろう。都市型商業集積からインターネットをフル活用した直販まで、新しい都市型の商業形態が模索されなくてはならない。2008年に京都市などで、コンビニエンスストアの深夜営業が問題となった。行政が温暖化対策などを前面に出してコンビニの深夜営業を禁止する方向で検討を始めたのに対し、コンビニ業界は猛反発している。