2015年8月11日火曜日

高齢化社会め主要財源

これを実際に行なうには、きわめて強い政治的な抵抗があるだろう。しかし、そうした改革の努力なしには、今後の財政運営は、きわめて困難な状態に陥るといわざるをえない。社会保障費が巨額になっているヨーロッパ諸国では、消費税は主要な税源だ。また、消費税は間接税であるため、負担感が薄いという特徴もある。だから、高負担税制においては、消費税を主要な税にすれば、政治的な反対を最小限にとどめることができる。

しかし、それだけのことから高齢化社会め主要財源を消費税に求めようというのは、安易な考えだ。社会保障給付をまかなう主要な税源を何に求めるかは、課税の容易さ以外の点も考慮して、慎重に考えるべき問題である。以下では、相続税こそが社会保障給付をまかなう主要な財源となるべきだという考えを提起し 社会保障給付がない社会では、退職後の生活は子供の扶養によって支えられることが多かった。

扶養される親は、他方で住宅などの資産を子供に残す。もちろん、資産は扶養の直接の対価として渡されるものではない。しかし、結果的にみれば、扶養と遺産は対応していたと考えることができる。実際、自営業などの場合には、引き継いだ店舗などの資産が生み出す所得で親を扶養することが一般的だろう。あるいは、資産を売却して現金化し、それを扶養の財源とするケースもあったろう。

ところで、社会保障制度は、退職後の人々の扶養を、家族単位で行なうのでなく、社会全体で行なうこととした。そうであれば、扶養の「対価」である親世代からの資産の移転も、社会化すべきであろう。つまり、相続を家族単位で行なうのでなく、社会全体で行なうべきである。これは、相続税率を一〇〇%にすべきことを意味する。しかし、現在の制度は、こうはなっていない。相続は社会保障制度が充実される以前と同じく、家族単位で行なわれている。

したがって、社会保障制度が導入される以前と比較すると、相対的に有利になったのは、多額の遺産を受ける可能性のある人々である。親の扶養を家族内で行なった場合には受け取る資産がその分だけ減少していたはずだが、そうはならない分だけ受け取り資産が増加するからである。福祉社会とは、所得の低い人々を救う社会であると一般に考えられている。そうした側面があることは間違いない。しかし、老後の給付に関する限り、相続税の強化をともなわない福祉社会は、多額の遺産を期待できる人々に有利に働くのである。このことは、一般にはほとんど認識されていないことなので、強調する必要がある。