2014年4月17日木曜日

「生活習慣病」は克服できる

治療の詳細と合併症が発症してくる経過か時系列で記してありますから、読者自身の状況にあてはめれば、現在の自分はどの時点におり、「快楽習慣」を「改善」出来なければ、今後どのような経過をたどり、どのような治療か必要になるのかおおよその見当をつけることが出来ると思います。これらの症例をとおして、「生活習慣病」とは文字どおり生活習慣に直結した病気のことであり。その予防も治療も生活習慣の改善そのもののなかにあることを理解していただきたいと思います。

症例1 こまめに悪い習慣をチェック(男性・初診時七六歳)映画監督のAさんは一九八八年(七六歳)に血糖値が高くなって教育入院をしました。教育入院とは、糖尿病とはどのような病気かということを糖尿病の患者さんによく理解してもらうために、食事のとり方や運動のし方などを指導するためのものです。以来、朝食を摂ったあとは必ずスニーカーを履いて一時間の散歩(運動療法)に出かける、その後で仕事をする、という生活パターンを確立し、家にいる時ばかりでなく旅先でも忠実に実行しています。八六歳になった現在でもボケとは全く無縁、走れと言ったら本当に走り出してしまいそうな脚力を保持しています。

一九九九年三月に初めて舞台の演出をしました。舞台の初日が三月二五日、その翌日に定期検査のため来院しました。「今日は自信かないな」と言っていましたか、血糖値がいつもより五〇ほど高いことを告げられると、「舞台をやっていますとね、僕が甘党だということを知っているんで、女優さん達が競争で甘いものの差し入れをしてくれるんですよ。断わっちや悪いと思って、ついつい食べちゃったから。やっぱり饅頭の食べすぎはダメだな」と反省していました。そぱにいたマネージャーは「舞台の演出はとってもハードで朝から晩までですから。途中で倒れるんしやないかと心配しましたよ」と本当に心配していたようです。

そこでA監督は「昨日で終りましたからね、もう大丈夫。元の生活に戻りますから一ヶ月後には下げてきますよ」と宣言しました。一〇年以上にわたる関係ですから、宣言どおり実行してくると確信していましたが、はたして四月二七日の血糖値は正常値に戻っていました。「饅頭は食べないようにしたし、寝る前に何か食べたりするのもやめたんですよ。八七歳の誕生祝いのケーキの処分には困りましたよ。朝の散歩も気今いを入れてやったし」と満面笑み、本当に喜んでいました。

このような超人監督ですら、オーバーワークと過食、間食が続くと血糖値は高くなってしまいます。しかし彼はタラタラと過食、間食を続けることは絶対にしません。仕事に一区切りついたら生活習慣を見直し、悪い習慣はやめる、少なくともやめる努力は怠りません。「悪い習慣はやめ、生活にメリハリをつけなくてはいけない」という信念が世界最年長の現役監督の頭脳と肉体とを支えていることは間違いありません。「長い間続けてきた習慣だから」と悪い習慣を改めようとしない人は、これからの超高齢化社会で「ボケて長生きをし、その上足腰が弱って身の周りのこともできないやっかい者」になってしまう確率が高い、と言わざるをえません。