2014年7月19日土曜日

国際協力の第一の側面

このような考え方に対して、中央銀行の独立を守るためには、ドイツ、スイス流に通貨価値の番人に徹したほうがよいという意見もありえよう。しかし、両国の中央銀行も、実際には、銀行監督官あての民間金融機関の報告書を直接受け取って監督官に回付したり、監督官の状況判断に重大な注意を払っているという。わが国の場合、歴史的に両機能が併存してきたという現実がある。金融政策の円滑な運営のためには、決済制度を含め信用秩序が安定していることが望ましく、両方の役割を併有できるならば、併有したほうがよい。

また、信用秩序の番人といっても、監督するだけの銀行監督官と、平時の監督と並んで緊急時に「最終の貸手」として流動性を供給できる機能をもった中央銀行とでは、番人としての効用にも差がある。市場に安易な期待感を植えつけては困るが、緊急時に支援能力があると期待、信頼される中央銀行は、平時においても民間金融機関の協力(率直な情報提供など)を受けやすいであろう。私は日本銀行が二つの番人の役割を併有する現行体制を支持したい。

この場合、民間金融機関といえば、かつては銀行が中心であり、とくに大銀行に着目してその協力を得ておけばまず十分と考えられていた。しかし、最近では、日銀と直接取引関係のない中小の預金受入機関の経営不安が金融秩序全体をおびやかしている。また、金融の自由化に伴って、銀行等の預金受入機関と証券会社、投資銀行等との間の垣根が低くなってきており、いずれの経営問題も金融秩序に影響を与える可能性は決して少なくない。さらに、金融の国際化に伴って、各国の金融機関が他国にも進出しているほか、決済制度も自動化しかつ国際的な連携を深めているので、信用秩序としては、一国の信用秩序だげでなく、全世界の金融市場の秩序を考えなくてはならない時代となっている。

通貨価値の番人としての中央銀行は、BIS等を通じて、他国の中央銀行との間で、マクロ経済情勢についての意見や情報の交換だげでなく、時としては国際収支や為替相場に関連した資金援助を行うことも必要となるが、信用秩序の番人としての中央銀行も、各種の国際協力が欠かせない。

信用秩序の番人としての国際協力の第一の側面は、銀行監督である。各国相互に乗り入れている自国や他国の金融機関、それも銀行等預金受入機関だけでなく、証券会社や投資銀行についても、共通のルールを作ったり、相互に相手国に出張するまでして監督し合わなくてはならなくなっている。また、監督の対象となっている金融取引も、デリバティブなど新しい金融技術の発達に伴って一段と複雑になっている。

2014年7月5日土曜日

一村一品運動は実践である

一村一品運動については、県職員にも直接、説明の機会をもった。一村一品運動は行政主導ではなく、あくまで地域住民のイニシァティブによるものであるから、一村一品課もなければ、一村一品補助金もなければ、一村一品条例もない。これは今日まで変わらない。たまたま大分市にあるデパートの社長が、この運動を始めて一年後に、「運動の趣旨に感動しました」といって一億円を寄付してくれた。

これを一村一品基金とした。今日ではいろいろな方々からの寄付もあり、一億六二〇〇万円になっている。この基金の利息収入を運用して、一村一品奨励賞として、金賞(二〇〇万円)、努力賞(五〇万円)などをもうけ、努力している市町村の地域づくりのグループに差し上げている。税金ではないから何に使ってもよい。実際には、海外への研修や国内の視察、地元の公園建設など、有益に使われているようである。

一村一品運動は理論ではない。実践なのである。実践を通じて地域にやる気をおこさせる運動である。したがって、モデルを示さなければ具体的な理解が得られない。「ここの町ではこうした。だから人が増えたんだ、所得が伸びたんだ」という成果を示すのである。この手法は企業でもたいへん大事であると思う。部下に口で言っただけでわかるようなら、役職員はいらない。役職員は、いかに事例を多く知っているか、さらにどんなに困難な事態になってもこれまで学んできた経験から解決策を見出していけるかどうかによって価値(存在理由)が問われる。

そこで、一村一品運動によって地域が活性化された五つの事例をあげることにしよう。大山町、湯布院町は先に述べたが、ここではさらに詳しく述べる。梅・栗から、いまCATVI-大山町「本番行きますよ。五、四、三、二、一……」「今晩は。お茶の間ニュースです……」午後六時、定例のニュース番組が始まる。スタジオにスタ″フは六人。緊張の走る一瞬だ。ところが、民放のテレビ局とは少し勝手が違う。スタジオは町役場のなかにある。

大山町は、耕地面積が全体の一〇%に過ぎない小さな農山村である。その大山町は前述したようにムラおこし発祥の地。「梅・栗植えてハワイに行こう」のキヤッチフレーズで全国に名を馳せた。四一年に「第一回ハワイ観光団」を出発させ、これまで中高校生を含め、五〇〇人以上の町民がハワイでの生活を体験している。ほかに中国、イスラエルなどにも出かけており、パスポートの所持率も県民平均の約二倍に達している。いま、このムラおこしの町の役場専用スタジオから、町内全世帯に町独自のナマ情報を送っている。