2012年4月27日金曜日

「お荷物」輸入米に脚光、穀物需給の逼迫映す

みそや米菓の原料に使う、ミニマムアクセス(最低輸入量=MA)米の価格が上昇してきた。国産の加工用米の高騰と品薄で需要が増えたところに、コメ不足の地域へ向けてMA米在庫を供出する構想も浮上し、先行きの品不足感が強まった。安価な原料に頼ってきた加工業界には焦りの色が濃い。

農林水産省は加工業者向けの入札を毎月実施する。6月には2005年度輸入契約分の加重平均価格が11万2861円と前月に比べ8.6%上がった。入手可能な1番安い年度の比較では、1年前の03年度分より27%上昇した。

農林水産省が昨年から入札の予定価格を引き上げている。「国の財産である輸入米を安く売ることはできない」との立場から、MA米の価格を国産の特定米穀(規格外のコメ)並みに引き上げる方針だ。

特定米穀は稲作技術の発達などでここ数年、発生量が減少しており高値圏に張り付いたまま。対策として、加工業者はMA米の調達を増やした。昨年度までの2年間でみそ業界では使用量が2倍、米菓でも約2.2倍になった。

自給率39%の食料輸入大国にあって、コメは数少ない自給可能な農産物。外圧で輸入を義務づけられたMA米は需要がないため在庫が膨れあがり、ピーク時の2006年3月末には203万トンに達した。保管にかかるコストも問題視された。

このため農水省は輸入の米粉調製品から原料を切り替える業者には、MA米を安く販売して在庫処分に躍起になった。また06年度から飼料向けの販売を始め、今後も古い年度のコメは飼料向けに優先して供給していく方針。加工用に回る安価なMA米が減ることは必至だ。

今月の食料サミットで福田康夫首相は世界的な穀物需給の逼迫(ひっぱく)に対応し、MA米の在庫のうち約30万トンを放出する用意があることを表明した。品不足に拍車をかけそうで、「いつでも安く買える」と高をくくっていた加工業者には不安感が台頭している。

「もともと安く買ったものなのに、一方的な値上げはおかしい」と恨み節も聞こえる。ただ新興国の経済成長や人口増を背景に、安価な穀物が潤沢にあった平和な時代は終わりつつある。かつての「お荷物」の変質は、国際的な穀物需給の逼迫を物語る。

2012年4月23日月曜日

ファンドが仕掛けた天然ゴム高

自動車用タイヤなどに使う天然ゴムの相場が国内、海外ともに過去最高値圏で推移している。東京で起きた海外ファンドの仕掛け的な買いが、巡り巡って主産国タイの農家の原料売り渋りを呼び、供給不安をあおったためだ。

天然ゴム先物を扱う主要な商品取引所はアジアに2カ所ある。東京工業品取引所とシンガポール商品取引所(SICOM)だ。どちらもRSS3号が指標となっている。東工取市場は商品取引会社や海外ファンドなどが参加しており、流動性が高いのが特徴だ。SICOMは実需筋の参加が多いとされ、実際の需給環境を映しやすいとの見方がある。ただ、実際は同じ品目を上場しているため、裁定が働きやすく、どちらか一方がもう片方と大きく離れた相場を形成することは少ない。

今回の天然ゴム高騰を主導したのは東工取市場とされる。先高観を感じ取った海外ファンドが大量の買いを入れ、大幅上昇につながった。

海外ファンドが買いを入れた背景には原油価格の高騰がある。原油は代表的な国際商品であり上昇時には他商品への買いも入りやすい。また、天然ゴムの競合品である合成ゴムの原料でもあり、天然ゴムへの需要シフトが進むという連想を呼びやすい点で相場変動要因として影響力が大きい。

天然ゴムの相場は主産国タイが2月から4月に原料の減産期に入るため、毎年上昇しやすくなる。東京市場では買いが売りを上回るようになり、SICOM相場もこれに収束していく形で上昇していった。

これに派生して起こったのが産地農家の原料売りしぶりだ。実需ベースとされるSICOM市場でRSS3号相場が上昇したことにより、「天然ゴム原料の樹液も今後一段と高く売れる」との観測が広がった。

結果として減産期が明けても供給が増えない状況となり、東京では買いが加速。天然ゴムは東京とSICOMで高値サイクルを作り出したことになる。

ただ、農家はいつまでも売り渋りを続けていられるわけではなく、供給量は今後徐々に増える見通し。天然ゴム相場が足元で最高値圏でのもみ合いになっているのも、「そろそろ供給不安は払拭(ふっしょく)されるのでは」との市場の思惑が見え隠れする。アジアを舞台にした天然ゴム高騰劇はいったん終息を迎えつつあるようだ。

2012年4月18日水曜日

ガソリン最需要期、給油所の憂うつ

いよいよ夏休み到来。ガソリンは7月下旬から8月末にかけ、1年を通じての最需要期を迎える。ただ首都圏の給油所の店長たちの顔色は一様にさえない。価格の高騰を受けた買い控えで販売量が大幅に落ち込んでいるからだ。

石油情報センターが16日にまとめた14日時点のレギュラーの給油所店頭価格(全国平均)は1リットル181.3円。前年同時期に比べて3割も高い。都内で「1リットル184円」の看板を掲げる新日本石油系の給油所店長は「前年に比べて販売量が2割ほど減っている。夏休みも似たような状態が続くだろう」とあきらめ顔だ。

全国の給油所数は2007年度末時点で約4万4000店。1994年度末に比べ3割弱も減ったうえ、「7割が赤字」とも言われる。国内市場が縮小するなかで過当競争に陥っており、原油価格の高騰分を店頭価格に転嫁し切れていないからだ。

首都圏で4店を運営していた小規模の石油販売会社は今年3月と6月に相次ぎ店舗を閉めた。同社の社長は「続けていても赤字が増えるだけ。残りの2店舗もどうなるかわからない」と寂しげに語る。

原油高で「レギュラー200円」が目前に迫る一方、価格競争も激しくなっている。神奈川県の国道16号沿いの給油所は7月初めに182円に上げたレギュラー価格を、10日間で178円まで下げた。採算は厳しいが、店長は「販売量をある程度確保するためには仕方ない」と苦渋の表情だ。

ある石油業界関係者は「この夏場の最需要期の売れ行きが、今後の給油所の販売姿勢を左右する」と指摘する。消費者が高値を受け入れて量がそこそこ売れれば値下げは沈静化するが、大幅な販売減となれば値下げ競争で淘汰が加速する、との読みだ。給油所はどちらの道を選ぶのか。答えは遠からず出る。

2012年4月10日火曜日

楽観できない銅加工品メーカーの値上げ交渉

銅加工品メーカーは燃料や副資材費の上昇を理由に加工賃の引き上げ交渉を進めている。主原料の銅の価格は建値に連動するが、加工賃は顧客と交渉して決める。需要が伸び悩んでおり、交渉の行方は楽観できない。

日本伸銅協会(東京・台東)によると2007年度の銅加工品の生産量は99万8000トンと5年ぶりに100万トンを下回った。需要減の一因は銅加工品の製品価格がこの数年、高値で推移していることにある。銅製品より安い樹脂製品などに切り替える需要家の動きもあった。

銅板や銅管などの東京の問屋価格は現在、軒並み3年前の2倍程度。値決めの指標になる国内製錬会社の銅地金の建値が上昇しているためだ。銅地金の建値は7月中旬で月平均1トン95万円程度と最高値圏で推移している。南米の鉱山のストライキを受けて国際価格が上昇し、建値も高止まりしている。

高値に加えて、07年は改正建築基準法の施行による住宅着工減で住宅向けの出荷が伸び悩んだ。08年度も景気後退を受けて住宅着工は依然として回復しないまま。水回りの金具に使う黄銅棒やエアコンに使う銅管の生産量は伸び悩んでいる。

ここにきて携帯電話やパソコンなどの生産調整の影響も出始めている。電子部品に使うリン青銅や銅と亜鉛の合金である洋白板の問屋への受注は落ち込んでいる。

メーカーとしては加工賃の引き上げが浸透しないと収益が改善されないのも事実。ただ、北京五輪後の需要の冷え込みも懸念され、銅条や黄銅条を使う自動車も生産計画の見直しが進んでいる。メーカーが狙う加工賃の引き上げは一筋縄ではいかなそうだ。

2012年4月2日月曜日

原油相場上昇、政策のスキにつけ込むマネー

原油相場が青天井で上昇している。「投機悪玉論」がしきりに聞かれるが、マネーは値動きを増幅させているに過ぎない。原油が買われるのは理由があるからだ。問題は将来の供給不足懸念もさることながら、消費国に市況を冷やそうという姿勢が乏しい点にあるのではないか。マネーはそうした政策のスキにつけ込んでいるように思う。

消費国の政策で疑問に感じるのは国家備蓄放出に消極的なことだ。米国は同時テロ以降、戦略石油備蓄(SPR)の積み増しを進め、現在の在庫量は約7億バレルと過去最高水準だ。数%取り崩せば需給への影響はあるはずだし、取り崩しを示唆するだけでも市場心理への影響はあるはずだ。ブッシュ政権は備蓄積み増し停止を発表したが、放出には動こうとしない。

サウジアラビアを除く中東産油国の増産余力は乏しく、新興国の需要を抑えるのは難しい。米国や日本など先進国が原油高対策に動くべきなのに、備蓄確保にこだわり、かえって供給懸念を強めているようにみえる。

原油高の一因とされるドル安についても、米国がどこまで危機感を持っているか疑わしい。米国にとってドル安は輸入物価の上昇につながる半面、穀物や自動車の輸出促進につながる。貿易赤字縮小という側面も考えれば、ドル安をさほど深刻な危機と受け止めていないのかも知れない。

消費国の政治家からは、原油高について現状分析や責任転嫁の発言が目立つ。自ら本気で対策を示さない限り、市場になめられるばかりだ。