2012年5月24日木曜日

金、インフレヘッジで再注目

最大の買い材料だったドル安の一服で上値の重い展開が続いている金相場。そんな中、「インフレに強い」という金の特徴に改めて注目が集まりつつある。

原油や食料価格の上昇で世界的にインフレ懸念が強まっているためだ。金の国際相場は昨年秋以降、米国の相次ぐ利下げによるドル相場の下落に連動する形で騰勢を強めてきた。しかし、米利下げは4月でひとまず打ち止めとの観測が広がり、ドルの下落トレンドにも歯止めがかかった。5月以降のニューヨーク先物相場(期近)は850―900ドル程度でもみ合う。

ただ、5月下旬には900ドルを超えて騰勢を強める場面もあった。ニューヨーク原油先物(期近)が1バレル130ドルを超え、インフレ懸念が改めて意識されたためだ。

インフレは世界的に進行している。ユーロ圏の5月の消費者物価上昇率は前年同月比3.6%とユーロ導入後の最高水準に再び上昇。米国も卸売物価上昇率が前年同月比で6%を超えている。新興国はより深刻で、ロシアやベトナムなどは2ケタの消費者物価上昇率を記録している。

日本はまだ物価上昇率が低いものの、インフレへの関心は高まっている。金の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシルは、日本の年収1000万円以上(世帯ベース)の金投資家を対象に定期的なアンケート調査を実施している。従来の調査では金を保有する理由として「無価値にならない」という回答が最多だったが、今年3月の調査では初めて「インフレに強い」という回答が上回った。

インフレに対抗するためのいわゆる「インフレヘッジ」の目的で投資する人が増えつつあるわけだ。インフレに強いのは実物資産に共通する点。しかし、無国籍通貨としての性格を持つ金はインフレ時に特に人気を集めやすい。「年後半に米国でインフレ懸念がいっそう強まる」とみる市場関係者は多く、金相場の動向にも影響を与えそうだ。

2012年5月15日火曜日

「明日も喋ろう」阪神支局襲撃伝える写真展始まる。

1987年5月、朝日新聞阪神支局(兵庫県西宮市)が散弾銃を持った男に襲われ、記者2人が殺傷された事件を伝える写真パネル展「明日も喋(しゃべ)ろう――言論への暴力に抗して」(朝日新聞大阪本社主催)が14日、京都市北区の立命館大学国際平和ミュージアム2階で始まった。10月8日まで。

言論・報道の自由を凶弾で封じようとした事件を思い起こし、暴力と闘うさまざまな営みについて知ってもらおうというねらい。襲撃事件の資料を朝日新聞社外で公開するのは初めて。

写真パネルは約40点。事件発生直後の阪神支局の様子や、亡くなった小尻知博記者(当時29)の腹部に無数の散弾が写るX線フィルム、「赤報隊」の犯行声明文をはじめ、小尻記者の母みよ子さん(79)が無念の思いを詠んだ俳句や、事件を語り継ぐ集会・演劇の様子などが並ぶ。

立命館大は小尻記者の母校。同ミュージアムの安斎育郎・名誉館長は「自分の価値観のためには暴力も許されるという主張を決して許してはならない」と話す。

2012年5月9日水曜日

人気集める整頓ビジネス

気が付けば、モノがあふれ雑然とする住まい。片付けようとしたものの、何を捨てて何を残したらいいのか。こんな経験をお持ちの人も多いだろう。こうした層を狙ったビジネスが人気を集めている。
関東や関西でハウスクリーニングなどを手掛けるベアーズ(東京・中央)には家財道具を片付けて欲しいとの依頼が今年に入り前年同期の3割増えている。基本料金は3時間1万1295円だ。処分する品が多いと、トラックの手配などで別途数十万円ほどのコストがかかるケースもあるという。

別のサービス会社は、2時間当たり2人のスタッフを派遣した時の料金を東京都内だと2万円程度を提示する。いずれにしても割安な料金とは言い難い。それでも片付けや収納のサービスが人気を集めているのは、東京の都心部でマンションが増えたことが背景にあるようだ。眺めのよい高層物件も少なくないが、その一方で収納スペースが限られることが片付けに悩む人を増やしている。
社会の高齢化も影響しているらしい。あるサービス会社は「お年寄りが亡くなった後、遺品の処分に困った親族が利用を申し込んでいる例がある」と打ち明ける。体力の衰えた高齢者だと大きくて重いものを処分しにくい。長い人生の中で思い出の品も増えるだけに、遺品は多くなる。

「そもそも人はモノを捨てられない生き物。我々への需要は消えることがない」と語るのが、トランクルームの運営会社だ。トランクルームにはビル内を間仕切りして収納スペースを確保したものと、屋外にコンテナを置いたり、専用の建屋を建てたりして場所を貸し出すものがある。東京・JR山手線内エリアではビル内のトランクルームの月額が3.3平方メートル当たり2万5000―3万円のケースが多い。

最近増えてきたのは、神奈川県西部など大都市の郊外にあるトランクルーム。3.3平方メートル換算で月1万3000円前後で貸し出しているケースもあり、東京都渋谷区などからも利用者があるという。このトランクルームでは24時間出し入れ可能だが「一度モノを預けた顧客は大半は2度と扉を開けることがない」(運営会社)。所有物を捨てられない人の利用が多い実態が浮き彫りとなっている。

「トランクルームを使うとこんなにお金がかかりますよ、と説明しています」と語るのは、収納カウンセリングを手掛けるゆとり工房(東京・豊島)。同社は専任カウンセラーが実際に家庭を訪れ、最長6カ月かけ家財道具の収納や処分の仕方を教えるサービスを手掛けている。指導料金は3LDK(70平方メートル)に4人が暮らす部屋の場合、総額18万円だ。

これも一見高い料金。ただ、家の中を整頓する術(すべ)を身に付けることは将来収納用品を買う手間がなくなるといった観点でノウハウを教える。これとは別に座学主体の収納講座(有料)も東京で開いている。こうした収納・片付けビジネスはマンション販売が振るわなくなったことで成長が鈍るという指摘もある。ただ、「収納や片付けの苦手な母親が、娘の結婚前に片付けサービスを利用して、2人でノウハウを学んでいる」(家事代行会社)というケースもあり、今後も新しい需要が拡大するのかもしれない。