このところ、スーパーからも米屋の店頭からも米が消えたといって、話題になっている。この国に米がないわけではなく、円滑に出回っていないということで、理由は農家と業者と消費者が、ためこんでいるからだという。ためこんでいない農家や業者や消費者もいるが、値上がりを見越してためこんでいる商人かおり、品薄と聞くと買いだめに走る消費者がいることは確かで、人がそのように動けば、店頭から米が消えもしよう。この現象を新聞、テレビが煽っている、という批判の声が出ているが、マスコミは、煽る気はない、事実を報じているだけで、それかマスコミの責務だ、と言うだろう。
けれども、大半のメディアは、鎮める方向ではなく、煽る方向で報じているように、私には思える。特にテレビは、例によって例のごとく、視聴率を上げるための表現以外のことは、まるで考えないかのようである。キャスターと呼ばれる人たちの発言の影響力は絶大である。キャスターが、輸入米には安全性に問題があるなどと二言言おうものなら、何百万人もの人が、輸入米を口にしたらたちまち体をこわすような気持になる。テレビはそれはどの力を持っている。
ロサンゼルス在住の邦人が。おいおい、それじゃ明け幕れカリフォルニア米を食っているオレは、とっくに死んでなきゃならないことになるぜ、と雑誌のエッセイに書いたぐらいでは、とても太刀打ちできない。マスコミの言う、平成米騒動だの、平成米パニックだのという言葉も、人々の不安を煽っているのではないか。まだ、騒動だの、パニックだのと言うほど切迫した状況ではないのではないか。
なるほど、米買いの行列が、ところによってできているようだが、そんなものは、騒動でもパニックでもあるまい。せいぜい、コシヒカリ行列、国産米行列といったところではないか。なに、テレビに煽られても、国民はそれほど馬鹿じゃない。一面では現実を肌で感じているから、コシヒカリ不足ぐらいでは逆上しない。
このところ米が出回らないといっても、他の食品は、これまでどおり豊富である。パンもあれば、ウドンもある。弁当屋さんや食堂からご飯が消えたわけではない。野菜も肉も調味料も、なんでもある。これだけふんだんになんでもあって、目下国産米だけが品薄なのである。
人は、コシヒカリが買えなきや。カリフォルニア米を買うのである。カリフォルニア米が買えなきや、タイ米を食うだろう。今に、安全性など誰も言わなくなる。なに、コシヒカリがなけりや、カリフォルニア米や豪州米がうまくなる。それが食えなきや、タイ米がうまくなる。そうなってもこの国が飽衣飽食の国であることには変わりがなく、国民はそれぐらいのことは知っている。パニックなどにはなるわけがない。