そんなの対処しようがないって?違います。証明はできなくとも、反証があるかどうかは簡単にチェックできる。反証のないことだけを暫定的に信じる、明確に反証のあることは口にしないようにすることが、現代人が本来身につけておくべき思考法です。実際には世の中の事象の多くは証明されていない(証明不可能な)ことなのですから、反証かおるかどうかを考えて、証明はできないまでも少なくとも反証の見当たらない命題だけに従うようにしていれば、大きな間違いは防げるのです。
ところがこと社会的に何か動きを起こそうとすると、反証の有無は無視されて、証明の有無だけが決定的に重要とされがちです。最悪の例が水俣病でしょう。水俣病の原因は、工場から垂れ流された廃液の中の有機水銀化合物だったという事実は、今では社会的に広く認知されています。ですが当時そのことは、学問的には証明できていませんでした。そこをタテに、つまり「水銀が奇病の原因とは論証できていない」という口実で、当時の通産省は廃液への規制をなかなか行わず、その間も被害が拡大したのです。ところが実際に廃液垂れ流しを止めてみると、水俣病の新規発生も止まりました。つまり、有機水銀化合物が水俣病を起こすということは「学問的には論証できなかった」のですけれども、「有機水銀化合物がなければ水俣病は起きない」という反証は成立したわけです。
このように実際の世の中には、論証を待たずとも反証を検証して実行に移すべき政策があります。そこを認めないでぐずぐず論証を待っていると、へ夕をすると人の命まで失われてしまう。女性就労と出生率の話もまったく同じような構造で、「若い女性が働いている県の方が出生率は高い」という事実を、理由はともかく事実として認めないと、日本経済が死んでしまいます。よく誤解されるのですが、「出生率を上げるために女性就労を促進しろ」と言っているのではないですよ。「内需を拡大するために女性就労を促進しましょう。少なくともその副作用で出生率が下がるということはないですよ」と言っているのです。
そうはいっても皆様に肺に落ちていただかないと仕方ないので、「なぜ若い女性の働く都道府県の方が合計特殊出生率が高い」という相関関係が観察できるのか、理由を推測してお話しします。あくまでも推測でして、証明はできませんが、どれかによって少しでも多くの人が「肺に落ちた」という思いになっていただければ幸いです。推測できる理由の第一は、いまどきダブルインカムでないと、子供を三人持つということはなかなか難しいからということです。普通の家庭の収支バランスを考えれば、皆さん簡単にご実感できることではないでしょうか。なぜ子供三人という話が出るのか。人目水準を維持するには二程度の出生率が必要ですが、三人以上産んでくださる人が相当数いない限りは当然出生率は二を超えません。
ということで、たまたま子供を産むのに特に向いた体質・性格を持った人がいた場合には、経済的な制約にからめとられることなく三人以上を産み育てていただける社会構造にしておく方が望ましく、そのためにはダブルインカムのご家庭を増やすことが近道なわけです。理由の第二は、共働きであることにより、会社に行くことやその間は保育所などを利用できることで、あるいは親の手助けをより受けやすくなることで、子育てのストレスが少しは緩和されるということです。さらには若い世代ではかなり当たり前になってきているものと願っていますが、父親も母親も働いていることで、逆に父親もなるべく対等に育児に参加するようになりますと、二人でより多くの子供を育てる意欲が湧いてきます。